町田・相模原|通信制高校 精華学園町田校 校舎長ブログ

起立性調節障害、うつ病、ひきこもり、発達障害に必要なのは「正しい理解」

起立性調節障害は自律神経失調症のひとつです。小学生から高校生にかけてなりやすく、身体の病気であるにもかかわらず、理解されにくく「生活リズムが乱れている」「だらしがない」「宵っ張りだからいけない」のように言われてしまうことも少なくありません。

起立性調節障害とは

不登校やひきこもりの気づきにくい引き金のひとつが「起立性調節障害」です。ここではその症状や対処方法などについてご紹介しながら起立性調節障害とは何かをご説明します。

1.リズムが5時間程度ずれる

朝、目が覚めて交感神経が活発化することで私たちは1日の生活を始めます。起立性調節障害になると午前中に交感神経の活動が活発化しません。一般的に5時間程度遅れてスイッチが入るので、昼や午後から活動ができるようになります。

そして、5時間のズレは夜にも影響します。いわゆる「寝る時間」になっても交感神経の活動が活発な状態が続くので寝ることができません。その影響で昼夜逆転してしまいます。

「5時間の時差ボケ」というイメージを持っていただけると1日のリズムは理解しやすいかもしれません。

起立性調節障害は気づきにくいのが特徴です。
「なぜ、中高生の起立性調節障害は気づきにくいのか?」

をご参照ください。

交感神経・副交感神経とは
交感神経とは戦闘態勢にある時に活発になる神経を指します。そして、副交感神経とはその逆です。リラックスしたり胃腸が活発に働きます。昼間、交感神経が活発になり、夜、副交感神経が活発になることで私たちは切り替えを行っています。

 

2.起立性調節障害の症状とは

主な症状は次のようなものです。

1)朝起きれない

「朝、起きれない」ということは「朝、学校に行けない」という意味でもあります。起立性調節障害の60%強が不登校と言われています。また、身体の問題だと理解してもらえるまでは「サボっている」「だらしがない」のように言われてしまうこともあります。

2)長時間立っていられない

起立性調節障害の人は身体を起こしている(立つ、座る)という姿勢をとると脳の血流が減少してしまいます。その結果として、思考力は判断力が低下したり「だるさ」「めまい」「頭痛」などの症状が重くなります。身体を横にするだけで血流が改善されるので楽になります。学校では朝礼中に倒れてしまうと頭を打ってしまうこともあるので無理をしないことが大事です。

3)たちくらみ(脳貧血)

2)にも関連しますが、立ち上がった時に脳に血流が行かなくなるためたちくらみになることもあります。「目の前が真っ暗になる」と訴えるケースもあります。起きた時やお風呂でも同じようにたちくらみになることがあります。

4)食欲不振

胃の消化吸収は副交感神経によって胃の血流を増やすことによって行います。起立性調節障害によって副交感神経が正しく機能しないと食欲不振という症状になります。

5)集中力の低下やイライラ

交感神経が優位になると脳に血液が行かなくなります。その結果として、集中できなかったり、イライラしてしまいます。特に午前中は勉強に集中できずに思うようにいかず、それがさらにイライラにつながってしまいます。

6)その他

それ以外の起立性調節障害の症状には以下のようなものがあります。

  • 顔が青白いことがある
  • 腹痛がある
  • 倦怠感がある
  • 頭痛がある
  • 乗り物酔いしやすい
  • 動悸、息切れ
  • 入浴時に気分が悪くなる
  • 午前中は調子が悪い
  • 夜、目が冴えてしまって寝られない
  • 失神やけいれんすることも
  • 疲れやすく回復が遅い

7)注意したいこと

起立性調節障害の症状のほとんどが検査しても異常が見つけられないものです。一般に検査しても発見できない症状を「不定愁訴(ふていしゅうそ)」と呼びます。

起立性調節障害を発見するためには本人が自覚する「めまい」「だるさ」などが重要な手掛かりになります。「サボっている」「甘えている」と解釈してしまうと見落としてしまいますので、起立性調節障害かもしれないという観点で一度チェックをしてみることが大事です。

 

起立性調節障害は判断を誤ると二次的な問題につながってしまいます。
詳しくは「起立性調節障害の対応を誤ると」をご覧ください。

 

3.起立性調節障害の検査(新起立試験)

起立性調節障害の有無や種類を調べるためには「新起立試験」という検査をします。

1)新起立試験は午前中

新起立試験は午前中に行います。症状が出ている午前中に検査をしたいところですが、本人が動けない時間帯に検査を受けるのはつらいものです。本人の状況を把握しながら検査を受けたいですね。

2)10分間安静

その後、10分間は診察台の上で血圧計、心電図、聴診器をつけた状態で安静にします。この時に脈拍や血圧などを測定します。

3)立ち上がって血圧、脈拍測定

医師の指示で身体を起こして立ち上がります。検査のためとはいえ、本人にとっては苦しい瞬間です。その後、立ったまま1、3、5、7、10分後の血圧と脈拍を測ります。立ち上がった瞬間に顔面蒼白になったり、失神してしまいそうになることもあります。

4)起立性調節障害の4つの分類

起立性調節障害には以下の4つの分類があるとされていますが、最近では分類数が増えつつあります。

  • 起立直後性低血圧
    たちくらみやめまい、失神など
    起立直後に強い血圧低下が起きるタイプ
  • 体位性頻脈症候群
    頭痛や全身の倦怠感、ふらふらする
    起立時に心拍数が増加するタイプ
  • 神経調節性失神
    顔面蒼白になり、けいれんを起こしたり失神する
    起立中に突然血圧が降下するタイプ
  • 遷延性(せんえんせい)起立性低血圧
    冷や汗が出たり動悸などの症状
    起立直後は正常だが3〜10分後に血圧が低下するタイプ

起立性調節障害の中では「起立直後性低血圧」「体位性頻脈症候群」が多いですが、途中でタイプが変わることもあります。

 

4.起立性調節障害の改善ポイント

起立性調節障害は理解されにくいものです。本人にとっては「朝起きれない」「だるい」「頭が回らない」「たちくらみ」のような症状だけでなく、「学校に行けない」「怒られる」「将来への不安」などさまざまな二次的な問題も複雑に絡み合います。

1)水分と塩分

起立性調節障害の原因の一つに「血液が少ない」ことがあります。血液量を増やすために1日あたり、水分2Lと塩分10gを目安に摂取するようにします。

2)ゆっくりと立ち上がる

立ち上がる時の血流を意識すると起立性調節障害の症状を緩和することができます。立ち上がる時には顔を上げずにうつむきながら立ち上がり、最後にゆっくりと頭を起こすようにします。それだけでも急激な変化を和らげることができます。

3)長時間立たないように

長時間立っていると血液が下半身に溜まり始めます。長時間立っている姿勢になることを避けるとともに立っていなくてはいけない時には足を動かしたりして下半身に溜まった血液を筋肉で循環させるようにします。

4)日中は寝転がらない

つらいからと日中に横になってしまうと自律神経はそれに適応してしまいます。その適応によってさらに起立性調節障害の症状が悪化してしまうので、日中は身体に「血液を送る負荷」をかけ続けます。具体的には「横にならない」「つらくても上半身を少しでも上にする(血液を送る機能を使う)」などの工夫をしてください。

5)ストレスを軽減する

起立性調節障害は自律神経に関する病気です。自律神経は心理的な状態、ストレスの影響を受けやすいのでストレスが起立性調節障害を悪化させる原因となります。朝、起きれないことで学校に行けない。人間関係が悪くなる。そんな二次的なストレスを軽減することが起立性調節障害の症状を軽減することにもつながります。

 

5.起立性調節障害の生徒に学校ができること

起立性調節障害は身体の病気です。身体の成長とともに改善していくとはいえ、症状が出ている時期には大きな負担になります。そして、環境的な要因や精神的な要因で症状が変化するのも特徴なので、起立性調節障害そのものだけでなく、それによる二次的な問題を予防する周囲のサポートが重要です。

1)起立性調節障害への理解

「理解がある環境」を作ることが最優先事項です。理解がない環境では安易に「サボっている」「甘えだ」と言われてしまいストレスを増やしてしまいます。「起立性調節障害は身体的な問題であり、成長とともに改善していくものだ」という理解を広めることが先決です。これによって、本人が安心できる居場所を作ることができます。

2)5時間シフト

これは通信制高校だからできることですが、「午後から授業を受けられる」といった環境を作るだけでも無理に朝起き上がることを強いずにすむので楽になります。ただ、「本来は朝から、、」という雰囲気の中で一人だけ午後からというのはストレスになります。自然な形で午後から授業を受けられる場作りが欠かせません。

3)二次的な問題への対応

起立性調節障害において難しいのは「学校に行けないこと」「不安」「人間関係」「自信喪失」「未来が見えない」「学業の遅れ」といったような二次的に発生する問題への対応です。

  • 怠けていると誤解されてしまうのがつらい
  • 気持ちを切り替えても身体がついてこない
  • 変に同情されて腫れ物扱いにされたくない
  • 勉強できないことを怒られるがやれない
  • 無理して勉強してもできないから嫌になる
  • 勉強や部活などが遅れてしまうのがつらい
  • 逃げているのか身体のせいかわからなくなる
  • 出席日数が、、、内申が、、、という話題がつらい
  • 人生全体に負い目のようなものを感じてしまう
  • 自分でも甘えているのかと自分を非難する
  • 半日動けないので自信がなくなってしまう
  • 友達とのコミュニケーションがギクシャクする

このような気持ちを汲み取りながら、環境を整えたり、気持ちの整理をしたり、遅れている勉強のサポートをすることで二次的な問題を発生させないことは非常に重要だと思います。

4)保護者とともに

起立性調節障害とそれによる二次的な問題を学校関係者や保護者が「理解しておく」ことは本人にとっての助けになります。

新しい情報を共有しつつ、より良い環境を作っていくことが大事だと思います。

詳しくは「起立性調節障害:学校の対応」にまとめてあるのでそちらもご参照ください。

 

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プロフィール

椎名雄一(心理カウンセラー)

椎名雄一(心理カウンセラー)

初めまして。椎名雄一です。 多くの大人が問題を先送りしようとします。今、解決しなければ、子どもはより困難な未来を乗り越えなくてはなりません。 [詳細]