町田・相模原|通信制高校 精華学園町田校 校舎長ブログ

起立性調節障害、うつ病、ひきこもり、発達障害に必要なのは「正しい理解」

起立性調節障害:学校の対応

time 2018/07/04

身体の問題で「朝、起きれない」「めまい」「長時間立っていられない」「食欲不振」などの症状に悩まされるのが起立性調節障害です。学校側の理解がないと「怠け」「甘え」と言われてしまったり、対応してもらえないこともあります。起立性調節障害に苦しむ生徒たちに学校側ができることをまとめてみました。

起立性調節障害自体については「起立性調節障害について」をご参照ください。

起立性調節障害:学校の対応

起立性調節障害は自律神経に関係する身体の病気です。10歳〜16歳に多く見られ、血流が悪いことによる「めまい」「朝、起きれない」「学校に行けない」などの症状に悩まされます。起立性調節障害は知らない人も多く、きちんと理解している人も少ないので「甘えている」と言われてしまうこともあります。

1.教員が起立性調節障害を理解する

起立性調節障害は教職課程で勉強することはほとんどありません。まずは教員が起立性調節障害をきちんと理解することが求められます。

1)3つの部位と起立性調節障害

人は「思考(理屈)」と「身体」と「心」のバランスがとれて初めて思ったような行動ができます。これは生徒に限ったことではなく、「ダイエットできない大人」「イライラしてしまう大人」「スマホ依存の大人」なども同じ症状を抱えていると言えます。

思考:朝、早く起きないといけない

身体:血流が脳に回らずに午前中は動けない

心 :きちんとしたい。怒られるの嫌だ。やる気でない。

もし、そんな風に本人の中がなっているとしたら、「出席日数が足りない」「他の子供達もみんなやっている」「進学できなくなる」という理屈で思考をいくら変えても実行できません。なぜならば、「朝、起きないといけない」と本人も知っているからです。

問題なのは身体が動かないこと

本人が理解しているのに身体がいうことをきかないのだとすれば、周りからの正論は「空を飛べない人に『飛べ!』という」ようなものです。あるいは「足腰の悪い高齢者に『走れ!』という」ようなものです。こう例えてみるといかに理不尽なことを受け入れて子供達が頑張ろうとしているかがわかります。

2)まず理解すること

学校側が起立性調節障害で悩む生徒に対してまずできることは「理解すること」です。学校側が積極的に起立性調節障害の情報を発信したり、起立性調節障害で悩んでいる生徒や保護者から教えてもらうことでより正しく状況を把握します。学校そして教員が正しく理解することが、起立性調節障害の対策の第一歩となります。

3)起立性調節障害の対応以外に注意

起立性調節障害の対応をしようとするとどうしても過剰なサポートをしがちです。サポートをする時に他の生徒の目がある場合、生徒がむしろそれをストレスに感じることもあります。

本人の意思を確認して、「手伝って欲しい」「送り迎えが欲しい」のようになった時にサポートをするようにします。

精華学園高等学校 町田校では教員だけでなく多くの生徒が他の生徒の症状(起立性調節障害だけでなく)を理解して助け合っています。「発達障害」「起立性調節障害」のような概念にとらわれすぎずに「◯◯くんの強み弱み」「◯◯さんの特徴」として教えられるのではなく、日々理解しようとする姿勢が温かい場作りに生かされています。

4)批判、責任という話をしない

起立性調節障害は「誰かが悪い」という問題ではありません。「保護者の育て方が悪い」「甘やかしているからいけない」という言葉やニュアンスが伝わるような表現をする教員がしてしまうことがありますが、一番辛いのは本人と家族です。

責められてしまうことで余計にストレスを感じて症状を悪化させてしまうこともあります。

起立性調節障害に限らず、批判、責任という方向に行く前に「そうせざるを得ない理由」を探すことが教育現場ではとても大事です。

5)欠席が多いなら連絡方法を逆にする

「今日お休みします」という連絡は本人、保護者にとって大きな心理的負担になることがあります。たまにお休みする程度の時にはそれで良いですが、欠席の方が多くなってきたら「今日、登校します」という連絡に切り替えるようにします。

また、連絡をメールにしたり、学校の体制によってはLINEなどを併用して、「今日学校お休みします」という心理的な負担を減らすように工夫しています。

精華学園高等学校 町田校では起立性調節障害の生徒を把握していますので、特別なイベントや授業以外は連絡をしなくても自由な時間に登校することができます。起立性調節障害の症状は日によって、時間帯によって変化しますから「今動ける!」というタイミングを生かせるルールはとても大事です。

6)体を横にできるような準備

起立性調節障害の症状がある時には「体を横にする」ことが大事です。保健室など体を横にできるような場所を確保して、速やかに移動できるような準備をしておきます。

長時間の立っている姿勢や場合によっては座っている姿勢が負担になることもあるので、無理をさせないように注意します。

 

2.「午後から授業」が許される学校

登校時間が「朝だけ」という意識が強すぎるとそれがプレッシャーになってしまいます。体調が整ったら登校すれば良いという気持ちになると負担が減ります。

全日制高校やスクーリングをまとめてやるようなスタイルの通信制高校には難しいことですが、起立性調節障害で悩む生徒には「午後から授業」が許される学校が助けになります。起立性調節障害は平均して5時間程度の時差があります。7時頃、多くの人が活動し始めるとしたら、起立性調節障害の生徒は12時頃動き始めることができます。つまり、授業を受けられるくらい頭が覚醒してくるのは13時頃です。

精華学園高等学校 町田校では午後から登校して授業を受けるスタイルで学んでいてもほとんどの単位を取得することができます。症状が重い時期は午前中ゆっくり休んで、自然に活動できる午後から勉強をすることで「勉強の遅れ」「友達とのギャップ」など二次的な問題を予防しつつ登校を続けられます。

全日制高校では午前中の授業を受けないで単位を取ることは難しいですし、集中スクーリングがある学校ではその期間に授業が受けられないと単位をもらえないので起立性調節障害で悩む生徒にはつらいルールであるといえます。

3.二次的な問題の予防

周囲の理解があれば起立性調節障害は乗り越えられない問題ではありません。しかし、一般には理解がないために責められたり、無理なルールを強要されることによって、二次的な問題が生じます。

1)自己肯定感の低下

自分と分離できない身体が引き起こす問題について、日常的に責められたり、うまくいかないことが続くことで自信を失ってしまいます。学校や家庭において発言をしなくなったり、「自分は迷惑をかけている」という気持ちから他のあらゆる場面で自己表現をしなくなることもあります。

いわゆる自己肯定感の低下は「人間関係」「勉強の質」「モチベーション」さまざまなところに影響します。

起立性調節障害があるからといって、自分の価値は全く変わるものではありません。当たり前のことですが、起立性調節障害が引き金となって自信がなくなってしまわないような配慮が大事です。

「呼吸器が弱い人」「皮膚が弱い人」「お腹が弱い人」がいるように「雑音が苦手な人」「午前中が苦手な人」「注目されるのが苦手な人」など人には得手不得手があります。型にはめたような「理想の人間像」に人を矯正していくのではなく、生来持っている得手も不得手もその人の特徴として理解し合うことで自己肯定感が育ちます。精華学園高等学校 町田校では心理学を使いながら長所を伸ばし、短所を長所に切り替えるような関わり方をしています。

2)人と会いたくなくなる

起立性調節障害の症状によって、人に迷惑をかけてしまうことがあります。しかし、説明しても理解してもらえない場合も多いので、次第に疲れて「どうせ言ってもわからない」とあきらめて、人との関わりを減らしてしまいます。

「さみしいのに人と会いたくない」そんなことを言ってひきこもるようになる生徒もいます。その気持ちを想像してみると胸が痛くなります。

3)精神疾患など

それ以外にも起立性調節障害によるトラブルやストレスから「うつ病」などの別の症状を併発することもあります。また、発達障害と起立性調節障害の両方に悩まされている生徒はさらに状況が複雑で深刻です。

その結果として、不登校や引きこもりになる人も少なくありません。きっかけは起立性調節障害で、それが成長とともに解消されていっても二次的に発生した問題があるために動けないままでいることも多いのです。

  • 怠けていると誤解されてしまうのがつらい
  • 気持ちを切り替えても身体がついてこない
  • 変に同情されて腫れ物扱いにされたくない
  • 勉強できないことを怒られるがやれない
  • 無理して勉強してもできないから嫌になる
  • 勉強や部活などが遅れてしまうのがつらい
  • 逃げているのか身体のせいかわからなくなる
  • 出席日数が、、、内申が、、、という話題がつらい
  • 人生全体に負い目のようなものを感じてしまう
  • 自分でも甘えているのかと自分を非難する
  • 半日動けないので自信がなくなってしまう
  • 友達とのコミュニケーションがギクシャクする

そんな気持ちを汲み取って、二次的な問題を予防しつつ、起立性調節障害の症状と向き合っていくことが求められます。

 

4.ご家族や友達とともに

起立性調節障害のことをご家族や友達など周りにいる人も知っている必要があります。重要なことは「起立性調節障害」の専門家を増やしていくことではなく、「起立性調節障害で悩むA君との関わり方」を教員を中心に緩やかに発信していくことです。

1)起立性調節障害=A君ではない

A君のもつ特徴、特性の中に「起立性調節障害」という部分があるかもしれませんが、「起立性調節障害」を100%理解したからといってA君を理解したことにはなりません。必要なのは「起立性調節障害」の専門家ではなく、A君の専門家です。

A君は「スマブラ(ゲーム)が好き」「青い色が好き」「英語が好き」「数学は嫌い」「ピーマンは嫌い」「冗談が好き」「絵を描くのが得意」「起立性調節障害で悩んでいる」「ギターをやりたい」そんなたくさんの想いや価値観、得意分野、特徴があります。

Bさんも「起立性調節障害」に悩みつつも「料理が好き」「猫が好き」「絵を描くのは苦手」「歴史が好き」「辛いものが好き」「アルバイトがしたい」という想いや価値観、得意分野、特徴があったとします。

A君とBさんは同じ人間でしょうか?違いますよね!

「起立性調節障害」を中心にふたりを同じ扱いをするということは「スマブラ」「ギター」「料理」「歴史」といったそれぞれの個性を無視して、「起立性調節障害の枠組み」に押し込めるようなものです。

そんな扱いをされて、元気に自分らしさを発揮するのは容易なことではありません。「スマブラやろうぜ!」「どんな料理を作ろうか?」という話題の方が力になるかもしれません。

2)起立性調節障害の出力を下げる

1日の多くの時間を

  • 起立性調節障害対策を考える
  • 起きられるか起きられないかでもめる
  • 立っていることを頑張らせる

のようにストレスフルに過ごすのと

  • 午後から快適に活動する
  • 起きている時間を楽しく有意義に過ごす
  • 好きな姿勢で作業、勉強ができる
  • 「スマブラ」「料理」などの会話が盛り上がる
  • 得意分野、明るい未来を一緒に探す

このようにして充実させるのとは周囲の関わり方でだいぶ変わってきます。「本人の中の0.1%の要素=起立性調節障害」なのと「本人=起立性調節障害」なのではだいぶ違うのです。残りの99.9%をいかに充実させるかが大事なポイントです。

3)ダメな人なのか、素晴らしい人なのか?

もしも教員やご家族、友達が「起立性調節障害があるダメなやつ」という気持ちを持っていたら何かの言動のたびに「(お前はダメなやつだから)手伝おうか?」というニュアンスが出てしまいます。

「朝、起きられないダメな子」と親が思っていたら言動にそれが出ます。身体的な問題を抱えているのにそう感じるのはつらいものです。

逆に
「我が家に欠かせない素晴らしい子」と親が思っていたらそれが言動に出ます。素晴らしい子が風邪をひいても『「熱を下げよう」「安静にしよう」数日後には元気な笑顔を振りまいてくれるだろうから、、、』というようなニュアンスで看病をすることはあっても「風邪をひいて寝ているダメなやつ」のようにはならないと思います。

起立性調節障害という状態にあっても「大切な子」「素晴らしい子」「愛する子」であることは1mmも変わらないはずです。そのポジションにいることが「あなたは素晴らしい」というメッセージにつながります。

起立性調節障害を理解しつつものみこまれないようにしていくことがとても大事です。

 

5.学校側の理解がない場合には

残念なことに保護者の意見を聞き入れず、適切な対応をしてくれない学校もあります。不適切な対応を繰り返されるとそのストレスが原因で起立性調節障害の症状が悪化してしまいます。

1)学校が悪循環の一端に

起立性調節障害の対応が不適切だと生徒の体調は悪化します。そうなることで学校に通いたくなくなり、不登校の状態に近づいていきます。学校からするとその状態は好ましくないですから余計に厳しく怒られたり、嫌味を言われることもあります。それを聞いた保護者がピリピリすることで家庭の雰囲気が悪くなり、生徒は家でも落ち着いて過ごすことができません。

そんな悪循環を学校が助長してしまうことがあります。

もちろん学校側が起立性調節障害をよく理解していることは大事ですがそうならないこともあります。

2)診断書を活用する

やむを得ない場合には診断書をもらって学校に提出します。主治医に「診断名」「重症度」「学校に求められる対応」などを明記してもらいます。それを学校に提出することで、保護者がお願いするよりも受け止めてもらいやすくなります。

3)ベースにあるのは学校との関係

学校とのやりとりをする時に大事なのは「攻撃をしない」ことです。学校にも事情があったり、判断の根拠があります。闇雲に攻撃をしても受け入れてもらえないばかりか、学校と保護者の関係性が悪くなってしまいます。

こうなってしまうと積極的に協力してもらうことができなくなってくるので、さまざまな対応ができなくなる可能性があります。基本は人間関係ですから、友好な関係を保ちつつ起立性調節障害で苦しむ本人のために最適な環境を作っていくことが大事です。

 

 

精華学園高等学校 町田校では「学校で習得すべき知識をお伝えします」という文脈ではなく、その生徒の素晴らしさと向き合う中で起立性調節障害の悩みを軽減する雰囲気作りをするように心がけています。

 

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プロフィール

椎名雄一(心理カウンセラー)

椎名雄一(心理カウンセラー)

初めまして。椎名雄一です。 多くの大人が問題を先送りしようとします。今、解決しなければ、子どもはより困難な未来を乗り越えなくてはなりません。 [詳細]