町田・相模原|通信制高校 精華学園町田校 校舎長ブログ

起立性調節障害、うつ病、ひきこもり、発達障害に必要なのは「正しい理解」

なぜ、中高生の起立性調節障害は気づきにくいのか?

time 2018/07/01

1.最近増えているおかしな症状と起立性調節障害

最近は次のような状況になっている中高生が増えています。

・朝起きられず、起きてもフラフラしている

・集中力が低下して勉強ができない

・不登校、ひきこもりの傾向がある

・夜は元気になってゲームやTVを楽しんでいる

・怠けていると叱られて家族関係がおかしくなっている

いずれも起立性調節障害と関係がある場合が多いのです。

 

2.起立性調節障害を自覚している中高生の数

起立性調節障害は10歳からとよく言われますが、アンケートをとって自覚症状を尋ねると中学生・高校生に起立性調節障害を自覚する生徒が多いことがわかります。

 

児童生徒の起立性調節障害症状

小学校1・2年生(男子) 0.9%

小学校1・2年生(女子) 0.5%

小学校3・4年生(男子) 0.8%

小学校3・4年生(女子) 1.7%

小学校5・6年生(男子) 2.2%

小学校5・6年生(女子) 3.5%

中学生(男子) 16.9%

中学生(女子) 25.6%

高校生(男子) 21.7%

高校生(女子) 27.4%

日本学校保健会「平成22年度 児童生徒の健康状態サーベイランス事業報告書」より

 

また、中学生・高校生共に男子よりは女子の方が自覚症状が多いことがわかります。

 

4人に1人の割合で起立性調節障害の症状を感じていたとしたら、「頑張れない生徒」「朝が苦手な生徒」「勉強できなくなってしまった生徒」「学校に行けなくなってしまった生徒」の中にもこれが原因の生徒がいるはずです。

「考え方の問題」「気持ちの問題」のような叱り方、モチベーションの上げ方では乗り越えられないつらさを味わっている生徒がどれだけいるかと思うと胸が痛みます。

 

3.子供の不定愁訴は実は多かった

起立性調節障害に関わらず、いわゆる不定愁訴で悩んでいる生徒はたくさんいます。頭痛を感じる子供は小学校中学校を通して4割を超えますし、腹痛も小学校5年性をピークにやはり4割以上の生徒が自覚しています。そして、立ちくらみやめまいに関しては小学生が2割程度なのに対して、中学生は4割(特に中学三年生は5割以上が自覚しています。

めまいの比率が5割以上なのと起立性調節障害の関連性ははっきりとはしませんが、多くの生徒の中で関係があると考えてよいのではないかと思います。

 

4.子供は自分の不定愁訴を親に言わない

さらに悩ましいのは中学生・高校生であっても子供は自分自身が感じている不定愁訴を親に言わないということです。親は子供が訴える「頭痛」「腹痛」「立ちくらみ」などを「いつもの言い訳」と解釈するようになっていたり、忙しくてきちんと受け止めないことも多いため子供は親にそれを言いません。また、不定愁訴は言葉にしにくく、なんと表現してよいかわからない。言ってよいのかわからない。どんな時に相談すればよいのかわからないという理由もあって、さらに親に言わなくなっています。

立ちくらみがあると答えた中学生が43%いる中でそれを知っている親の比率は18%にとどまりました。つまり半数以上の親は子供の立ちくらみを知らなかったという結果です。

 

動悸 22%(生徒) 7%(親)

頭痛 45%(生徒) 20%(親)

学校に行きたくない 30%(生徒) 親(6%)

恥をかいた 52%(生徒) 18%(親)

 

このように起立性調節障害とそれに関連する症状を子供は親に言いません。体のつらさを言わないのでどうしても気付くのが遅れてしまいます。

 

5.親に話せるか話せないか?

親に話せないケースにはいくつかの場合が想定されます。

 

1)親の主張が明確で曖昧さがない

普段から親の発言は明確で曖昧さがなく、ルールをビシビシ当てはめるような雰囲気があると「あいまい」なことは言えません。不定愁訴は言語化しにくいあいまいなものです。明確な状態になっていないと口にしてはいけないという雰囲気が家の中にあるということができません。

 

2)受け止めてもらえる気がしない

子供は「理解できないこと」「やり方がわからないこと」「言葉にできないもやもや」などじっくり時間をかけてもらえないと整理できない何かを抱えています。親が忙しかったり、じっくり聞かずに「それは甘えだ」と結論を決めてしまう姿勢だと子供は整理できない気持ちやよくわからない身体症状を相談できずにいます。

 

3)忙しくてタイミングがない

子供は「今、相談してよい時間かな?」というのを読み取りながらタイミングをうかがっています。自己肯定感が低い子供は遠慮がちにタイミングをうかがうので声が出せません。お寿司屋さんに行って、注文をする時に躊躇する人がいますがあれに少し似ているかもしれません。話をして良さそうな隙ができて、それから勇気を振り絞り、さらに言葉を選んで話し始めるのです。そんなゆったりとした時間が生活の中にないとタイミングをつかめずにいます。

 

4)大人を信頼できない

起立性調節障害に限らず、大人に不信感を持ってしまっている子供はたくさんいます。「いじめられている」と正直に言えば助けてあげると言われて、正直に言ったら翌朝の朝礼で「みなさんいじめをやめなさい」と先生に発表されてしまって余計にいじめが酷くなった。というような体験をしている生徒は大人を信用していません。過去に信頼して裏切られた経験を彼らはしっかりと学習しているのです。

 

5)形があるものを提出するのではない

人は自分の考えの断片を頭の中で検索して、それを集めて言葉にしようと試みて、言葉にするけれどもちょっと違うような気がして修正して、つじつまが合うような言葉の塊を作って、、、ということを会話をしながらやっています。清書された形のある答えが脳内にあるわけではないのです。

「朝、なかなか起きられないことなんだけれどね」

「あ、サボりぐせの件ね!」

 

のように方向性を先に決められてしまったら起立性調節障害の話になりません。

「えっと、サボりぐせの件じゃなくてね、朝起きられないのは、、、」

「あれはサボりぐせじゃないの?」

 

あっという間に「サボりぐせか?そうではないか?」の話題になってしまいます。この流れで身体の感覚的な症状を訴えても自律神経がどうこうと説明しても「言い訳」と解釈されてしまうでしょう。

 

これを聞きだせる親と聞き出せない親では状況の把握が大きく違います。親子と三者面談した時に

「うちの子は朝サボりぐせがあって起きないんですよ!」

と親が話をして、生徒と一対一になってから

「本当にサボりぐせなの?」

と聞くと

「めまい、、、みたいのがあって、、、」

と話を始めてくれます。このタイプの親は状況把握すらできていないのでその後の対応も全てずれてしまっています。

 

聞き上手な親になるためにはある技術が役に立ちます。傾聴(けいちょう)と呼ばれるものですが、これができると普段の3倍、5倍の状況把握ができます。お子さんにイライラして余計にこじれているご家庭に傾聴の技術を加えると一気に理解し合うことができます。今まで10回言っても伝わらなかったことを言わなくても理解し合えるようになります。

 

傾聴に関しては「オンライン傾聴講座」の方に動画付きの解説がありますのでご参照ください。

 

6.起立性調節障害のヒントを話してもらえるようにするために

不定愁訴、「怠けていると思われてしまう」という話題を話してもらえれば起立性調節障害である可能性を見いだすことができます。そのために有効な話の仕方をご紹介します。

 

1)黙って聞く

実はこれが一番労力が入らず効果が高い方法です。子供が言い訳かもしれないけれど身体症状や悩みを話し始めたら、「それが真実だ」と信じてじっくり聴いてください。少し間(ま)が空いても口を挟まずに真剣に続きを待って話を聞いてください。100歩譲って「言い訳」だったとしても「どうしてその切り口で言い訳を考えたんだろう?」と推測すると抱えている悩みの形が見えてきます。

 

2)種を蒔く

人は似た話を連想してしてしまう特徴があります。起立性調節障害の症状を想起するような話題を振って、反応を見るのも一つの方法です。「朝礼」「運動会」のような話題になった時に「ああ、そういえば昔同級生がよくフラフラして倒れていたな」のような「めまい」「失神」の話をするのです。お子さんにそれに近い傾向があれば「あ、私も」と一言言えば伝えられるのでチャンスです。このようなチャンスを作って、話のペースを落とすと連想ゲームのように起立性調節障害のヒントになるようなキーワードを話してもらえます。

 

3)聴き手を変える

話をする相手、つまり聴き手には話し手のイメージがついてしまいます。もしみなさんが「松岡修造」「マツコデラックス」「のび太くん」にそれぞれ相談をするとしたらなんとなくテーマを選ぶのではないでしょうか?答えてくれそうなテーマ、怒られそうなテーマを避けるのような操作が入ります。

お子さんが親に対して、「悩みを話せない」というイメージを持っていたら種まきをしても口を開いてくれないかもしれません。立場の違う第三者などを上手に介入させるは良いアイディアです。起立性調節障害や不登校の経験がある大学生が話しかけるとあっさり聞きだせることはよくあります。

 

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プロフィール

椎名雄一(心理カウンセラー)

椎名雄一(心理カウンセラー)

初めまして。椎名雄一です。 多くの大人が問題を先送りしようとします。今、解決しなければ、子どもはより困難な未来を乗り越えなくてはなりません。 [詳細]